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予防と治療「感覚器系」
眼精疲労
A、概念
眼精疲労は視覚作業による疲労状態が著しく、休息によっても充分な回復が得られず、常に眼痛、頭痛、視力減退、流涙、めまい、肩こり、吐き気、などの症状を起こす一連の症候群を言います。眼精疲労は視覚作業における環境の変化、つまり、従来の一般事務といった静的視覚作業からパソコンによる動的視覚作業への変化が、眼精疲労の原因としてクローズアップされています。眼精疲労の分類として、屈折性眼精疲労、調節性眼精疲労、筋性眼精疲労、症候性眼精疲労、不等像性眼精疲労、神経性眼精疲労、ドライアイなどが挙げられていますが、実際には眼精疲労の原因が単一ではなく、いくつかの要因が複合的に働いた、複合型の眼精疲労がが多いと言われています。
B、鍼灸治療
眼精疲労に対する鍼灸治療は、眼精疲労の原因が主にVDT作業によるものを対象とします、治療は眼筋への血流改善を目的として眼窩周辺の治療点に行うと共に、対症治療としてそれぞれの症状に応じた治療も行います。また眼精疲労の原因が器質的疾患によるものは、西医による治療が先決で、鍼灸治療は併用治療として随伴症状に対して行います。
C、予防
眼精疲労の原因が、老眼、眼筋麻痺、緑内障などといった器質的疾患によるものは予防できませんが、眼精疲労の原因がVDT作業によるものは、作業と休養のバランスをうまくとることによって予防できます。
ドライアイ
A、概念
ドライアイは涙液分泌不全によって、角膜及び結膜表面の涙液層が不安定となり、角膜や結膜が乾燥して傷つきやすくなって、その結果、引き起こされる障害の原因を総称したものです。涙液膜は角膜表面を7ミクロンの厚さで覆っていて、外側からマイボーム腺より分泌される油層、涙腺より分泌される水層、結膜の杯細胞から分泌されるムチン層の三つの層から成り、角膜、結膜の乾燥を防いでいます。またドライアイには器質的疾患によるドライアイと機能的異状によるドライアイとがあります。気質的疾患によるドライアイには、涙液分泌量が減少した場合と、涙液成分の質的異常による場合があります、涙液分泌量減少の原因には慢性関節リウマチ、全身性エリトマトーデス、シェーグレン症候群などがあり、涙液成分の質的異常としてマイボーム腺の炎症による油層形成不全、トラコーマによる涙腺導管の瘢痕性閉塞、ビタミンA欠乏症によるムチン層の形成不全などがあります。機能的異状によるドライアイは、眼精疲労とも重複しますが、車の運転時やパソコン作業などでは瞬きが通常の1/4にまで減少して、涙の供給が眼の乾燥に追いつかない状態が起きます、涙は眼の表面の保護、栄養分や酸素の供給、ゴミや細菌の進入を防ぐといった働きをしていますが、乾燥によってこれらの機能が働かなくなり、その結果角膜表面が露出してしまい、ドライアイ独特の症状が出てきます。ドライアイの症状は、眼の疲労感、痛み、めやに、流涙、ゴロゴロ感、乾燥感、かゆみ、視界がかすむ、重たい感じ、まぶしい感じ、不快感、充血などです。
B、鍼灸治療
ドライアイに対する鍼灸治療は、機能的異状によるドライアイを対象とします、これは交感神経過緊張による涙液分泌抑制ですので、鍼灸治療が非常によく効きます。治療は後頚部交感神経と顔面神経根部及び三叉神経涙腺枝への働きかけを行うと共に、ドライアイによって引き起こされる眼精疲労に対する治療も行います。また気質的疾患に起因するドライアイは、西医での検査による原因疾患の特定とその治療が先決で、鍼灸治療は併用治療として症状に応じた治療を行います。
C、予防
気質的疾患によるドライアイは、自己免疫疾患や感染によるものですので予防は困難ですが、機能的異状によるドライアイは、涙腺が副交感神経でコントロールされていますので、視覚作業の合間に副交感神経優位になるリラクゼーションをうまく取り入れることによって、ほとんどのドライアイは予防できます。
副鼻腔炎
A、概念
副鼻腔は左右一対の上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞からなり、これら副鼻腔の粘膜に炎症を起こしたものを副鼻腔炎といい、一般にいわれている蓄膿症は、副鼻腔内に膿がたまっていることを意味しています。副鼻腔炎には急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎があります。急性副鼻腔炎の多くは感冒から続発して、急性鼻炎から波及して起こります、そして主に上顎洞、次いで前頭洞が侵されます、症状は感冒症状に加えて頬部痛(上顎洞炎)、前頭部痛(前頭洞炎)、眼窩部や鼻根部の痛み(篩骨洞炎)などです。慢性副鼻腔炎は反復する急性副鼻腔炎のほかに、歯の炎症、鼻腔や副鼻腔の構造、アレルギーや自律神経の関与、栄養や生活環境などの要因が複雑に関与して慢性化に進むものと考えられています、症状は鼻漏、鼻閉、嗅覚障害、頭痛、頭重感などで、特に鼻閉は粘膜の肥厚や鼻たけ(鼻ポリープ)によって起こり、慢性副鼻腔炎の特徴的なものとなっています。
B、鍼灸治療
副鼻腔炎に対する鍼灸治療は、消炎鎮痛を目的とした鼻根部周辺の治療点に対して行います、また随伴症状に対する治療と薬物療法の副作用に対する治療も可能な限り行います。
C、予防
慢性副鼻腔炎は急性副鼻腔炎からの移行が大きく関与しており、急性副鼻腔炎は感冒から続発して発症します、したがって感冒にかかったら、こじらせないで早期治療を心がけることによって、副鼻腔炎は予防することができます。
耳鳴り
A、概念
耳鳴りとは外部に音源がないにもかかわらず音の感覚として認識されるものをいい、これには体内に音源があるものと音源がないものとがあります、また内容に意味を持つ幻聴などは耳鳴りに含まれません。耳鳴りの分類方法にはいくつかのものが挙げられますが、一般には自覚的耳鳴りと他覚的耳鳴りの二つに大別されます。自覚的耳鳴りは体内に音源がなく、第三者がこれを聞くことができないもので、これは耳鳴りを訴える患者さんの大多数を占めています、原因には聴覚機構になんらかの障害があると考えられていますが、耳鳴りの本態は明確にされていません。他覚的耳鳴りは体内に音源があって、それが物理的な振動を生じ、耳鳴り音として聞いている場合で、第三者が聴診器などで聞くことができます、これは主に血管性の腫瘍、動静脈奇形、口蓋筋クローヌス、耳小骨筋の異常運動などによるものです。
B、鍼灸治療
耳鳴りに対する鍼灸治療は、自覚的耳鳴りを対象とします、治療は血液循環改善を目的として、耳介部周辺の治療穴を中心に行い、あわせて後頚部の筋緊張を緩める治療を行います、また耳鳴りの症状によって引き起こされるストレス緩和を目的としたリラクゼーション治療も行います。他覚的耳鳴りは気質的疾患によるものですので、西医による原因疾患の治療が先決で、鍼灸治療は併用治療となります。
C、対策
難聴を伴った耳鳴りは比較的早期に受診加療される場合が多いのですが耳鳴りだけの場合、それを苦痛と感じるか否かは、個人差があって一様に判断できません、しかし随伴症状として不眠、神経症状、耳痛、耳漏、耳閉塞感、聴覚過敏などがある場合は、適切な検査と治療が必要です。
難聴
A、概念
難聴は音の聞こえが悪化した状態を言い、通常、会話音域の平均聴力損失が20デシベル以上の場合を難聴と呼びます。難聴は障害部位により伝音難聴と感音難聴に分けられます。伝音難聴は外耳と中耳の障害によるもので、外耳道の異物や耳垢塞栓、耳管炎、耳管狭窄症、中耳炎、乳様突起炎、耳硬化症、などがあります。感音難聴は内耳、聴神経、脳幹、皮質までの障害によるもので、内耳炎、メニエール病、聴神経腫瘍、脳腫瘍などがあります。また難聴を引き起こす原因によって職業性難聴、中毒性難聴、遺伝性難聴、機能性難聴、気圧外傷、音響外傷などと呼ばれます。
B、鍼灸治療
難聴に対する鍼灸治療は、原因が職業性、機能性、音響外傷によるものを対象とします、治療は血液循環改善を目的として、耳介部周辺の治療穴を中心に行います。気質的疾患による難聴は西医による検査と治療が先決で、鍼灸治療は併用治療となります。
C、予防
気質的疾患による難聴は原因疾患が多種多様ですので予防は困難ですが、職業性は耳栓などの防音具を装着したり、音響外傷によるものはボリューム調節することによって予防できます。
嗅覚障害
A、概念
嗅覚障害には、全くにおいを嗅ぐことができない嗅覚脱失、嗅力が正常者に比べて弱い嗅覚減退、においが必要以上に強く感じてしまう嗅覚過敏、普通のにおいが悪臭として感じてしまう嗅覚錯誤、実際にはにおいが存在しないのに感じてしまう嗅覚幻覚などがあります。またこの嗅覚障害を原因別に分類すると、呼吸性嗅覚障害、末梢神経性嗅覚障害、混合性嗅覚障害、中枢神経性嗅覚障害に分けられます。呼吸性とは、鼻腔形態異状によりにおい分子が嗅粘膜に到達できないもの、末梢神経性とは、嗅粘膜や嗅糸そのものの障害で起こるもの、混合性とは、副鼻腔炎や鼻アレルギーなどのように呼吸性と末梢神経性の嗅覚障害が合併したもの、中枢性とは、頭部外傷などにより嗅球や高位の嗅覚中枢の障害によって起こるものです、その他の原因として加齢現象、薬剤、有機ガス、手術などがあります。
B、鍼灸治療
嗅覚障害に対する鍼灸治療は、機能的疾患である嗅覚減退、嗅覚過敏、嗅覚錯誤、嗅覚幻覚を対象とします。治療は嗅覚機能の変調是正を目的とした、鼻根部周辺と眼窩上部の治療点に対して行います。気質的疾患による嗅覚脱失は、西医における原因疾患の治療が先決で鍼灸治療は併用治療となります。
C、対策
嗅覚は、鼻腔の天井部分にある嗅上皮の嗅細胞によって感受されます、この嗅細胞は神経細胞が直接、受容器となっていますので比較的再生能力があります、したがって呼吸性、末梢神経性、混合性の嗅覚障害は適切な治療を行うことによって改善します、しかし中枢神経性の嗅覚障害は現在のところ回復できません。
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