A、概念
不妊症は妊娠可能な年齢で、正常な性生活を営んでいる夫婦が、避妊期間を除いて2年以上経過しているにもかかわらず、妊娠が成立しない場合をいいます、この2年という期間は90%のカップルが結婚後2年以内に妊娠しており、この期間を過ぎると妊娠する例が少ないという事実からきています。
また不妊の原因が男女両性のいずれの側にあるかによって、女性不妊と男性不妊に区別され、その比率は1対1となっています。
そして、不妊の原因が諸検査によって原因疾患が特定できるものを器質性不妊、原因疾患が特定できないものを機能性不妊と区別しています。
女性不妊の原因として、排卵因子、卵管因子、子宮因子、頚管因子などがあり、男性不妊の原因には、性交不能症、射精障害、無精液症などによる場合もありますが、圧倒的に多いのは精子形成障害に起因する無精子症、乏精子症による不妊症です。
B、鍼灸治療
不妊症に対する鍼灸治療は、機能性不妊を対象とします、また女性不妊、男性不妊を問わず、治療内容は同じです。
治療は血液循環改善とホルモンバランスの調節を目的とした、腰仙部兪穴と腹部募穴による兪募穴治療を行うと共に、腎精強化を目指した経絡治療も行います。
また器質性不妊は、西医による原因疾患の治療が先決で、鍼灸治療は併用治療として薬剤の副作用や手術の後遺症に対して可能な限り行います。
C、対策
不妊症は女性不妊にしろ、男性不妊にしろ、夫婦間の共通した問題ですので、よく話し合って最善の策を講じてください、また近年結婚年齢の高齢化により、高年齢妊娠を余儀なくされています、高年齢は妊娠しにくいのは明らかですので、不妊期間は2年を待たず、1年でも治療を始めたほうがよいという考えもあります。
流産癖
A、概念
流産とは妊娠22週未満の中絶を言います、そして妊娠が自然に中絶される場合を自然流産、人工的に中絶する場合を人工流産といいます、また流産の時期により、早期流産(妊娠12週未満の流産)と後期流産(妊娠12週以降22週未満)に分けられますが、大部分は早期流産です。
自然流産は全妊娠の10~15%に起こるとされていますが、母体年齢が高齢になるにつれて流産の頻度は増加し、35歳以降では特に高率となります。
流産は臨床経過により、切迫流産、進行流産、稽留流産、不全流産、完全流産に分けられますが、このうち正常妊娠への復帰が期待できるのは切迫流産のみです。
また自然流産を反復して繰り返すものを習慣流産といい、連続して3回以上、自然流産を繰り返すものと定義されています、つまり流産癖とはこの習慣流産のことを言います。
流産の原因には、母体側、胎児側、配偶者側、血液型及び免疫学的不適合など多くのものが挙げられていますが、個々の流産例についてその原因を特定することは困難であり、習慣流産の半数以上は原因不明のものとなっています。
B、鍼灸治療
流産癖に対する鍼灸治療は、原因不明の習慣流産を対象とします、治療は自律神経機能、内分泌機能、免疫機能、血液リンパ循環機能など総合的な体質改善を目指した全身治療を行います。
器質的疾患による習慣流産は、西医による治療が先決で、鍼灸治療は併用治療となります。
C、対策
通常の流産は、胎児が正常な発育ができない為に起こる、ひとつの自然淘汰といえます、しかし習慣流産の場合は明らかに病的状態ですので、運が悪かったでは済まされません、原因を究明して適切な治療を施す必要があります。
特に母体側の異常には腫瘍、糖尿病、SLEといった自己免疫疾患などが関与している場合がありますので、出産をあきらめればすむという問題ではありません、したがって速やかな対応が必要です。
逆子
A、概念
妊娠中または分娩中の胎児の子宮内における位置は、母体との立体的な関係と胎児自身の取っている形によって、胎位、胎向、胎勢と表現しています。
胎位は子宮の縦軸方向と胎児の縦軸方向との相互関係によって決められ、頭部が下降する頭位、骨盤が下降する骨盤位、胎児の縦軸が子宮縦軸と直角に交差する横位があります。
胎向は縦位の場合、胎児の背中が母体の左右どちら側を向いているか、横位の場合は、胎児の頭が母体の左右どちら側を向いているかでそれぞれ分類しています。
胎勢は子宮腔内における胎児の姿勢をいい、これには脊柱及び頭部が前屈して顎が胸に接し、四肢を前面に組み合わせる屈曲胎勢と、顎が胸から離れて、後頭部以外の部分が先進する反屈胎勢とがあります。
正常な分娩は、胎位が頭位で胎勢が屈曲胎勢ですが、これは全分娩の95%を占めています、残りの5%が異常分娩として骨盤位や横位があり一般に「逆子」といわれています。
B、鍼灸治療
逆子に対する鍼灸治療は、胎児の位置が安定してくる妊娠8カ月以降から行います、つまり妊娠中期以前は胎児の位置が不安定で、逆子治療に関する限り効果が期待できないからです、治療は古来より伝わる特効穴に対して行います。
C、対策
逆子に対する西医における処置は、逆子状態のまま経過観察、体位変換法による逆子の頭位復帰、外回転術による逆子の矯正などですが、外回転術による逆子の矯正は条件に制約があったり、破水、早産、時には胎児死亡といった危険が伴うようです、したがって逆子に対する西医の考え方は帝王切開が第一選択となります。
鍼灸による逆子の治療は、歴史があり安全無害で、逆子の頭位復帰率も60%~80%といわれています、出産は自然分娩が基本であることは言うまでもなく、逆子対策としての帝王切開は最後の手段ではないでしょうか、したがって逆子の治療および安産の治療として鍼灸治療を取り入れることをお薦めします。